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虫歯で穴が空いているのに痛くないのはなぜか|痛みが出ない仕組みと放置リスク、進行度別の治療法を解説

虫歯で穴が空いているのに痛くないのはなぜか|痛みが出ない仕組みと放置リスク、進行度別の治療法を解説

こんにちは。兵庫県川西市、川西能勢口駅から徒歩3分の川西歯医者 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科です。

鏡を見ていて、奥歯に黒い穴が空いていることに気づいた。舌で触ると明らかに引っかかる。それでも痛みはまったく感じない。そのような状態に戸惑い、受診すべきかどうか迷っている方は少なくありません。「痛くないのだから、まだ軽いのだろう」と考えるのは自然なことです。

ただ、虫歯で穴が空いているのに痛くないという状態は、進行が浅いことを示しているとは限りません。痛みの有無と虫歯の深さは、必ずしも同じ方向を向いていないためです。むしろ、以前はしみていたのに最近しみなくなったという変化は、歯の内部で大きな変化が起きているサインになることがあります。

この記事では、まず痛みが出ない仕組みを歯の構造と生理の面から解説します。そのうえで、虫歯以外に穴のように見える原因、受診の緊急度を見極める観点をお伝えします。さらに、放置した場合にたどる経過、進行度別の治療方法、再発を防ぐための考え方まで順に解説します。歯に穴があることに気づいたものの、どう受け止めればよいか分からない患者さまの判断材料になれば幸いです。

虫歯で穴が空いているのに痛くないのはなぜなのか

虫歯で穴が空いているのに痛くないのはなぜなのか

痛みが出ない理由は、ひとつではありません。大きく分けると三つの場合があります。歯の構造上そもそも痛みが伝わらない段階にある場合、歯が自ら防御反応を起こして痛みを感じにくくしている場合、そして歯の神経がすでに機能を失っている場合です。

同じ「痛くない」という言葉で表される状態でも、その中身はまったく異なります。そして、その後に必要となる対応も変わってきます。痛くないことが軽症を意味するとは限らない理由について、次から順に詳しく解説します。

痛みの有無は穴の大きさではなく歯の神経との位置関係で決まる

歯は、外側から順にエナメル質、象牙質、歯髄という三つの層でできています。このうち痛みを感じ取る神経線維が集まっているのは、最も内側にある歯髄です。歯髄は一般に「歯の神経」と呼ばれている組織で、神経だけでなく血管も含んでいます。

つまり、痛みが生じるかどうかは、虫歯がこの歯髄にどれだけ近づいているかで決まります。欠損が歯の表面付近にとどまっている段階であれば、穴の見た目が大きくても痛みは出にくくなります。

逆のことも起こります。表面に見えている穴は小さくても、内部で象牙質に沿って広がり、歯髄のすぐ手前まで達している場合があります。「穴が大きいのだから痛いはずだ」という感覚が当てはまらないのは、痛みを決めているのが穴の直径ではなく、三層構造のどこまで進んでいるかだからです。

エナメル質には神経も血管も通っていない

エナメル質は人体で最も硬い組織として知られています。その一方で、細胞も神経も血管も含まない組織であるという特徴があります。そのため、虫歯がエナメル質の範囲にとどまっている間は、痛みも冷たいものによるしみる感覚も生じません。

同時に、細胞を持たない組織であるということは、傷ついた部分を自分の力で作り直せないということでもあります。いったん歯質が失われて穴の形になった状態は、う窩と呼ばれます。う窩ができた歯が、時間の経過とともに自然に元の形へ戻ることはありません。この点は、後ほど治療の選択肢を考えるうえで前提になります。

象牙質の痛みを伝える「動水力学説」

エナメル質の内側にある象牙質には、象牙細管と呼ばれる無数の細い管が、歯髄に向かって走っています。この管の中は組織液で満たされています。

冷たい水や乾いた空気が象牙質に触れると、管の中の液体がわずかに移動します。その動きが歯髄側にある神経の末端を刺激し、痛みとして感じられます。これがBrännströmによって提唱された動水力学説で、象牙質のしみる感覚を説明する考え方として広く受け入れられています。

注目したいのは、象牙質の痛みが神経に直接触れて起きているのではなく、液体の移動を介した間接的な現象だという点です。この仕組みを知っておくと、次に説明する「管が塞がれば痛みが消える」という現象が理解しやすくなります。

歯が自ら作る防御壁「第三象牙質」の働き

虫歯が象牙質に達すると、歯髄の最も外側にある象牙芽細胞という細胞が刺激に反応します。そして、歯髄の側に新しい象牙質を作り始めます。これを第三象牙質、あるいは修復象牙質と呼びます。

新しく作られた象牙質は、虫歯と歯髄との間に距離を生み出します。細菌が歯髄へ到達するまでの道のりが長くなるため、この壁が形成されている間は、虫歯が深くなっていても痛みが出にくくなります。歯が持つ防御反応のひとつです。

ここで「防御できているのなら、そのままでも問題ないのではないか」と感じる方がいらっしゃるかもしれません。ただ、第三象牙質はあくまで進行の速度に対する時間稼ぎであり、細菌の侵入そのものを止める仕組みではありません。壁を作り続ける速度より虫歯が進む速度が上回れば、いずれ歯髄に到達します。

進行が遅い慢性う蝕ほど痛みが出にくい

う蝕には、短期間で急速に進むものと、長い時間をかけて緩やかに進むものがあります。進行が緩やかなタイプは慢性う蝕と呼ばれ、成人に多く見られます。

慢性う蝕では、う蝕に侵された歯質が黒褐色に着色し、比較的硬い性状を示すことが知られています。進行がゆっくりであるぶん、第三象牙質が形成される時間も十分に確保されます。その結果、「黒くて大きな穴があるのに痛みがない」という状態が生まれます。

ただし、進行が遅いことと、放置してよいことは別の話です。時間をかけて確実に内部へ広がっているという事実は変わりません。

象牙細管が塞がる「硬化象牙質」

刺激を受け続けた象牙質では、象牙細管の内部にミネラルが沈着し、管そのものが閉じていく変化が起こります。この状態は硬化象牙質、あるいは透明象牙質と呼ばれます。

管が塞がれば、その中の液体は動きにくくなります。動水力学説で説明した痛みの経路が、物理的に遮断されるということです。

「前は冷たいものがしみていたのに、最近はしみなくなった」という変化を経験された方は、この現象が起きている可能性があります。症状が軽くなったように見えても、歯質の欠損そのものが小さくなったわけではありません。

すでに歯の神経が機能を失っている場合

虫歯が歯髄に達し、細菌感染が広がると、歯髄には強い炎症が起こります。歯髄は硬い象牙質に囲まれた閉じた空間にあるため、腫れて逃げ場を失った組織は血流を保てなくなります。そして最終的に歯髄は壊死します。

歯髄が失われれば、痛みを感じ取る仕組みそのものがなくなります。強い痛みが数日続いた後、ある日を境に嘘のように治まった、という経過をたどることがあるのはこのためです。

「痛みが引いたのは、治りかけているサインではないのか」と受け止めたくなる場面です。ただ実際には、この段階が最も進行した状態のひとつです。壊死した歯髄は細菌にとって格好の住処となり、根管を通じて歯根の先へ感染が広がる準備が整っていきます。外から見える穴の様子だけでは、この状態かどうかを判断することはできません。

自覚症状と歯の神経の状態は一致しないことがある

抜去された歯を用いた病理組織学的な研究では、臨床的な診断と実際の歯髄の状態が食い違う例が繰り返し報告されてきました。症状が軽いと判断された歯に部分的な壊死が見つかることもあれば、症状の強さと炎症の広がりが対応しない例もあります。

歯科医師が診断の際にエックス線検査や歯髄の反応を調べる検査を組み合わせるのは、患者さまの自覚症状だけでは内部の状態を確定できないからです。

痛みという指標に頼って様子を見る期間が長くなるほど、内部で進んだ変化に気づく機会は失われていきます。この点は、後ほどセルフチェックの限界を考えるうえでも重要になります。

痛みがないまま進行する虫歯は、実際にどれくらいあるのか

痛みがないまま進行する虫歯は、実際にどれくらいあるのか

ここまで説明してきた内容は、特殊な例外の話ではありません。統計の面からも、痛みを伴わないまま進行する虫歯が珍しくないことが示されています。

国内の疫学調査と、歯の根の先に生じる病変に関する国際的なデータを取り上げながら、その広がりを見ていきます。数値で捉えることで、「自分だけの特別な状況ではない」という安心と、「だからこそ確認が必要だ」という判断の両方につながります。

日本国内の未処置う蝕の実態

厚生労働省が実施した令和4年歯科疾患実態調査では、国民のおよそ3割が未処置のう蝕を有していることが示されました。未処置とは、虫歯があるにもかかわらず治療が行われていない状態を指します。

治療されないまま残っている歯が、これだけの割合で存在している背景には、痛みという明確な受診のきっかけが生じていないという事情が関わっていると考えられます。痛みが出ていれば、多くの方は歯科医院を探します。痛みが出ていないからこそ、後回しになります。

同じ調査では、歯の根の部分に未処置のう蝕を有する方の割合が、年齢が上がるにつれて高くなることも示されています。痛みを目安に受診を判断する習慣が長く続くと、その積み重ねが将来の歯の喪失につながっていく可能性があります。

無症状で経過する根尖性歯周炎

根尖性歯周炎は、歯髄の感染が歯根の先端まで及び、その周囲の骨に炎症性の病変が生じた状態です。歯の中から始まった感染が、歯の外側の組織へ広がった段階にあたります。

この疾患について、世界各地の調査を統合したシステマティックレビューでは、成人のおよそ半数が、少なくとも1本は根尖性歯周炎のある歯を持っていると報告されています。決して稀な状態ではありません。

さらに同じ研究では、根尖性歯周炎が慢性かつ無症状で経過することが多く、エックス線検査を行わなければ発見が難しいという点も指摘されています。痛みがないから何も起きていない、という前提が統計の上でも成り立ちにくいことを示すデータです。

歯に穴が空いているのに痛くないとき、虫歯以外の可能性

歯に穴が空いているのに痛くないとき、虫歯以外の可能性

穴のように見えるものが、すべて虫歯とは限りません。詰め物が外れた跡、酸によって溶けたくぼみ、力によって生じた欠損、生まれつきの歯の形など、原因はいくつも考えられます。

原因が違えば、必要な対応も変わります。削って詰めることが適切な場合もあれば、削らずに原因となっている習慣を見直すほうが優先される場合もあります。ただ、その判別を見た目だけで行うのは難しく、鏡で見た印象と実際の状態が異なることは珍しくありません。ここでは代表的な原因を順に見ていきます。

詰め物・被せ物の脱離と、その下で進む二次う蝕

過去に治療を受けた部位で、詰め物や被せ物が外れたり、境目に隙間ができたりすると、そこが穴として認識されることがあります。歯質そのものは残っていても、修復物が失われた分だけくぼんで見えるためです。

より注意が必要なのは、修復物の下で進行する二次う蝕です。外側からは修復物に覆われて見えないため、気づいたときには内部で大きく広がっている場合があります。

奥歯のコンポジットレジン修復を対象としたメタアナリシスでは、修復物が機能を失う主な理由として二次う蝕と破折が挙げられています。同じ研究では、う蝕リスクの高い方ほど年間の失敗率が高くなることも示されました。一度治療した歯だから安心、とは言い切れないのが実際のところです。

歯が欠けた状態を放置した場合の経過については、以下の記事で詳しく解説しています。

>>歯が欠けたまま1週間放置するとどうなるのかについてはこちら

修復物の下の虫歯が発見されにくい理由

金属やセラミックの修復物はエックス線を透過しにくいため、画像の上でその真下の状態が読み取りにくくなることがあります。加えて、修復物が歯髄への刺激を遮っているぶん、症状も出にくくなります。

見えにくく、症状も出にくいという二つの条件が重なるため、修復物の下の虫歯は発見が遅れやすくなります。定期的な検診の場で、修復物の境目に段差がないか、周囲に変色がないかを継続して確認していくことが、現実的な発見の手段になります。

酸によって歯が溶ける「酸蝕症」

酸蝕症は、細菌が関与しないまま歯が溶ける現象です。飲食物に含まれる酸や、逆流してきた胃酸が、歯の表面を直接溶かしていきます。

見え方も虫歯とは異なります。虫歯のように一箇所に限局した穴ではなく、歯の面全体が浅く皿のようにくぼむ、エナメル質が薄くなって先端が透けて見える、といった変化が現れやすくなります。

柑橘類や炭酸飲料を頻繁に口にする習慣、あるいは胃酸が逆流しやすい状態が関与すると報告されています。削って詰めるだけでは、酸にさらされる環境が変わらないかぎり同じことが繰り返されます。原因となっている習慣を確認するところから始めることが、治療の前提になります。

噛む力とブラッシング圧による「くさび状欠損」

歯と歯ぐきの境目に、くさびを打ち込んだような形のくぼみができることがあります。う蝕以外の原因で歯頸部の歯質が失われた状態は、非う蝕性歯頸部歯質欠損と呼ばれ、近年知見が蓄積されている領域です。

関与する要因としては、強すぎるブラッシング圧、硬い毛の歯ブラシの使用、そして歯ぎしりや食いしばりによって歯の根元に力が集中することなどが考えられています。

象牙質が露出すればしみることもありますが、痛みが出ないまま少しずつ深くなっていく場合もあります。ここでも、削って詰めるだけでは再発しやすいという特徴があります。歯ブラシの当て方を変える、就寝時に装置を用いて力を分散させるといった対応を、修復と並行して検討していくことになります。

生まれつきの形態と、着色との見分け

奥歯の噛む面には、もともと深い溝が刻まれている場合があります。エナメル質形成不全といって、歯が作られる過程でエナメル質が十分に成熟しなかった部分がある場合もあります。いずれも、穴が空いているように見えることがあります。

また、溝に沿った茶色い着色は虫歯と混同されやすい状態です。着色であっても歯質が失われていなければ、削る必要はありません。

「これは虫歯なのか、それとも着色なのか」という疑問は、多くの患者さまが抱くところです。両者の区別は、探針で歯質の硬さを確かめ、エックス線画像で内部の広がりを確認し、必要に応じて拡大した視野の下で表面の性状を見ることによって行われます。色だけを頼りに自分で判断することが難しいのは、色の濃さと歯質の状態が必ずしも比例しないためです。

歯に穴を見つけたとき、受診の緊急度をどう見極めるか

歯に穴を見つけたとき、受診の緊急度をどう見極めるか

穴があることに気づいた患者さまが最初に知りたいのは、今すぐ歯科医院へ連絡すべきなのか、次の休みまで待ってよいのか、という点だと思います。

ここでは、早めに相談したほうがよい状態と、落ち着いて予約を取って差し支えない状態に分けて、確認していただきたい観点をお伝えします。あわせて、自分で見て判断できる範囲には限りがあることについても触れます。実際に何を見ればよいのかが分かれば、次の行動を決めやすくなります。

早めに相談したほうがよい状態

歯ぐきが腫れている、押すと違和感がある、といった変化がある場合は、早めの確認をおすすめします。歯の中で起きた感染が、歯の外側の組織まで広がっている可能性があるためです。

噛んだときに歯が沈み込むような感覚がある場合も同様です。歯根の周囲で炎症が起き、歯を支えている組織の状態が変わっていることがあります。

そのほか、口臭が以前より強くなった、決まった場所に食べ物が詰まるようになった、といった変化も確認したい所見です。歯質の欠損が広がり、清掃しにくい形になっている可能性があります。

そして、以前はしみていたのに急にしみなくなったという変化も、この項目に含まれます。前半で説明したとおり、歯髄が機能を失った場合にも同じ変化が起こるためです。いずれの場合も、痛みの有無にかかわらず状態の確認が必要になります。

痛みを伴わない歯ぐきの腫れについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。

>>痛みのない歯ぐきの腫れが示す状態についてはこちら

落ち着いて予約を取って差し支えない状態

歯ぐきの腫れや違和感がなく、色の変化だけが見られる場合があります。あるいは、長期間にわたって見た目が変わっていない場合もあります。こうした状況では、その日のうちに駆け込む必要性は高くないことが多いと考えられます。

ただし、急がなくてよいということと、行かなくてよいということは別です。う窩ができている場合、その部分が自然に塞がることはありません。数週間以内を目安に予約を取っていただければ、慌てずに準備を進められます。

仕事や育児の予定が詰まっていて、すぐには時間が取れないという事情もあると思います。その場合も、まず予約の日程だけ決めてしまうと、判断を先延ばしにせずに済みます。

セルフチェックで判断しきれない理由

鏡で見えるのは、歯のうち限られた面だけです。歯と歯の間、修復物の下、歯ぐきに隠れた部分は視認できません。実際、歯と歯の間の虫歯は、エックス線検査ではじめて確認できることが少なくありません。

加えて、痛みという指標が歯髄の状態を正確に反映しないことは、前半で述べたとおりです。痛みがないという情報だけでは、歯髄が健康なのか、それとも機能を失っているのかを区別できません。

歯科医院では、目で見て、器具で触れ、エックス線画像で内部と歯根周囲を確認し、必要に応じて歯髄の反応を調べます。複数の情報を重ねることではじめて、削るべきか経過を追うべきか、歯髄を残せるかどうかの方針が定まります。

自己判断で様子を見る期間が長くなるほど、選べる治療の幅は狭くなっていきます。早い段階であれば削らずに済んだ歯が、時間の経過とともに詰める処置を必要とし、さらに進めば歯髄の治療へと移っていきます。

市販の詰め物キットで穴を埋める前に

薬局では、歯の穴を一時的に埋めるための材料が販売されています。応急的な手段として役立つ場面はありますが、注意したい点があります。

内部に細菌が残ったまま封じ込めると、かえって進行を早めてしまう場合があります。また、材料が入り込むことで、歯科医院での診査がしにくくなることもあります。

すでに使用された場合は、受診の際にその旨をお伝えください。いつ、どの部分に使ったのかが分かれば、診査の進め方を調整できます。

受診までの数日でできる口腔管理

穴の部分に食べ物が残ると、そこで細菌が増えやすくなります。歯ブラシの毛先を穴の周囲に丁寧に当て、歯間清掃用具も併用して、残った食べかすを取り除いてください。

一方で、爪楊枝などで穴の中を強く突く行為は避けてください。もろくなった歯質が崩れ、欠損が広がることがあります。

フッ化物配合の歯磨剤を使い、糖分を含む飲食の回数を減らすことも、進行を緩やかにするうえで役立ちます。受診までの数日を、できるだけ清潔な状態で過ごすという考え方です。

虫歯を自分の力で治せるかどうかについては、以下の記事で詳しく解説しています。

>>虫歯を自力で治せるのかどうかについてはこちら

痛くないとしても、歯の穴を放置するとその後どうなるのか

痛くないとしても、歯の穴を放置するとその後どうなるのか

ここからは、治療を行わなかった場合にたどる経過を、時間の流れに沿って見ていきます。歯髄の炎症から壊死へ、そして歯根の先の病変へ、さらに周囲の組織へと段階的に変化していきます。

不安を強めることが目的ではありません。どの段階でどのような治療が必要になるのかを知っていただくことで、今の状態にどう向き合うかを決めやすくなると考えています。

歯髄炎から歯髄壊死、そして根尖性歯周炎へ

細菌が歯髄に達すると、まず炎症が起こります。多くの場合は強い痛みを伴いますが、これまで述べてきたとおり、無症状のまま経過することもあります。

炎症が進むと歯髄は血流を保てなくなり、壊死に至ります。壊死した組織は細菌の増殖の場となり、根管を通じて歯根の先端へ向かって感染が広がっていきます。

感染が歯根の先を越えて周囲の骨に及ぶと、根尖性歯周炎の状態になります。この段階では、痛みではなく歯ぐきの腫れとして症状が現れることがあります。膿の出口が歯ぐきにできて、白いできもののように見える場合もあります。

ここまで進行すると、歯を残すためには根管の内部を治療する必要が出てきます。詰めるだけの処置では対応できない段階に移ったということです。

顎の骨や上顎洞への波及

歯根の先に生じた病変が拡大すると、周囲の骨にも炎症が及ぶことがあります。骨の中は柔らかい組織に比べて症状が出にくく、エックス線画像ではじめて広がりが分かる場合もあります。

上顎の奥歯は、鼻の奥にある上顎洞という空洞と近い位置にあります。歯根の先が上顎洞の底のすぐ近くまで伸びている方もいらっしゃいます。そのため、感染が上顎洞の中まで広がることがあります。

急性の経過をたどった場合には、顔の腫れや発熱を伴うこともあります。その状況では、原因となっている歯への対応が優先されます。

歯性上顎洞炎という状態

上顎洞に生じた炎症のうち、原因が歯にあるものを歯性上顎洞炎と呼びます。CT画像を用いた研究を統合したシステマティックレビューでは、上顎洞炎のうち相当な割合が歯に由来すると報告されています。

鼻づまりや頬の重さ、片側だけの不快感といった症状が続き、耳鼻咽喉科での治療を受けても改善しないという場合、原因が歯にあることも考えられます。

上顎の奥歯を痛みがないまま放置するということは、こうした経過の入り口に立ち続けるということでもあります。

歯冠が崩壊し、保存が難しくなる段階

歯質の欠損が広がると、噛む力に耐えられなくなります。ある日、食事の途中で歯の上の部分が崩れ、歯根だけが残るという経過をたどることがあります。

この段階になると、被せ物を支えるための歯質が不足します。歯ぐきより上に十分な歯質が残っていなければ、被せ物を安定して固定することが難しくなります。歯を残せるかどうかの判断が分かれる場面です。

歯を失った場合は、その機能を補う治療が必要になります。入れ歯やブリッジ、インプラントといった選択肢がありますが、いずれも周囲の歯や骨に何らかの負担がかかります。1本の歯を残すという判断が、その後の口全体の状態に影響していきます。

治療の負担・通院回数・費用が段階的に増える

歯の表面付近の欠損であれば、感染した部分を取り除いて詰める処置で完了し、1回の来院で終わることが多くあります。

歯髄に達していれば、根管の治療が必要になり、複数回の通院が必要です。根管内を清掃し、薬剤を詰め、その後に土台を作り、被せ物を製作するという工程が加わります。

さらに歯冠が崩壊していれば、保存できるかどうかの検査から始まります。削る量も、通院に要する期間も、進行度に応じて段階的に増えていきます。

「あのとき行っておけばよかった」という後悔は、こうした差から生まれます。同じ1本の歯であっても、いつ受診するかによって必要な処置が変わってきます。

虫歯の治療にかかる費用の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。

>>虫歯の治療費についてより詳しくはこちら

歯科医院では、歯に空いた穴をどのように診断するのか

歯科医院では、歯に空いた穴をどのように診断するのか

受診を決めたものの、何をされるのか分からないという不安を持たれる方もいらっしゃいます。ここでは、歯科医院で行われる診査の流れをお伝えします。

目で見る診査から始まり、器具で触れて歯質の状態を確かめ、エックス線画像で内部を確認し、必要に応じて歯髄の反応を調べるという順序が基本です。あわせて、精密な把握のための機器がどのような場面で役立つのかについても解説します。

視診・触診・エックス線検査・歯髄の反応を調べる検査

まず、目で見て歯面の色や形の変化を確認します。次に探針という細い器具で表面に触れ、歯質が軟らかくなっていないかを確かめます。硬さは、う蝕の活動性を判断するうえで重要な手がかりになります。

エックス線検査では、欠損がどの深さまで及んでいるか、歯と歯の間に広がっていないか、歯根の周囲の骨に変化がないかを確認します。目で見えない範囲を把握するための検査です。

歯髄が生きているかどうかは、冷たい刺激や電気的な刺激に対する反応で調べることが一般的です。ただし、この検査にも限界があり、結果だけで確定できない場合があります。

そのため、1回の診査ですべてを決めるとは限りません。経過を追いながら判断していく場合もあります。

>>当院の虫歯治療についてはこちら

拡大した視野と三次元画像による精密な把握

マイクロスコープによる拡大視野は、肉眼では判別しにくい歯質の変色や、修復物の境目のわずかな段差を確認するうえで役立ちます。どこまで削る必要があるのかを見極める場面でも用いられます。

歯科用CTは、通常のエックス線画像では重なって見えにくい部分を三次元的に把握できる装置です。歯根の形や本数、周囲の骨の状態を立体的に確認できます。

当院ではこれらの設備を備え、削る範囲をできるかぎり抑えるための診断を重視しています。歯質は一度失えば元には戻らないため、診断の精度がそのまま残せる歯の量につながると考えています。

進行度別に見る、穴が空いた虫歯の治療方法

進行度別に見る、穴が空いた虫歯の治療方法

治療の方法は、虫歯がどこまで進んでいるかによって変わります。ここでは、一般に用いられるC0からC4という分類に沿って、それぞれの段階で選ばれる処置を解説します。

削らずに管理する段階から、詰める処置、歯髄を守る処置、根管の治療、そして抜歯の判断まで幅がありますが、どの段階にも共通する考え方があります。健康な歯質をできるだけ残すという方針です。順に見ていきます。

C0からC1|削らずに管理できる段階

エナメル質の表面でミネラルが溶け出しているだけの段階であれば、削らずに経過を追うという選択肢があります。フッ化物を応用し、歯垢を確実に取り除く習慣を整えることで、溶け出したミネラルが再び取り込まれる再石灰化が期待できます。

日本歯科保存学会のう蝕治療ガイドラインでも、初期の病変に対する非切削での管理が位置づけられています。安易に削らないという方針は、現在の歯科において標準的な考え方です。

ただし、この選択肢が取れるのは、歯質の実質的な欠損が生じていない場合に限られます。すでにう窩ができている状態では、再石灰化によって穴が埋まることはありません。この線引きは重要です。

C2|コンポジットレジン修復とインレー

象牙質まで達した欠損では、感染した歯質を取り除き、失われた部分を材料で補います。

欠損の範囲が限られていれば、コンポジットレジンという歯科用の樹脂を直接充填する方法が選ばれます。その日のうちに形を整えて仕上げられるため、多くの場合は1回の来院で完了します。

欠損が広い場合や、強い噛む力がかかる部位では、型を採って製作した詰め物を装着する方法が選ばれます。この方法では、製作の期間として来院が複数回に分かれます。

材料には保険診療で用いられるものと自費診療で用いられるものがあり、それぞれ強度や見た目、経年変化の性質が異なります。当院グループは法人内に技工室を持ち、製作の工程を近い距離で確認できる体制を整えています。

>>当院の審美修復治療についてはこちら

修復物には寿命があり、二次う蝕への備えが必要になる

詰め物や被せ物は、装着した時点が完成ではありません。年月の経過とともに、歯と材料の境目はわずかずつ劣化していきます。

奥歯のコンポジットレジン修復に関するメタアナリシスでは、う蝕リスクの高い方ほど年間の失敗率が高くなると報告されています。また、失敗の主な原因は二次う蝕と破折であることも示されています。

詰めて終わりではなく、その後をどう管理するかが歯の寿命を左右します。この点は、記事の後半で予防について述べる際に改めて取り上げます。

深い虫歯|歯の神経を残すための「選択的う蝕除去」という考え方

虫歯が歯髄のすぐ近くまで達している場合、判断が難しくなります。感染した歯質をすべて取り除こうとすると、歯髄が露出する可能性が高まるためです。

かつては、感染した部分は残さず取り切るという考え方が主流でした。しかし現在は、国際的なコンセンサスとして異なる方針が示されています。International Caries Consensus Collaborationによる推奨では、選択的う蝕除去という方法が支持されています。深い病変に対して歯髄側の軟らかい歯質をあえて残し、その周囲を確実に封鎖するという方法です。

「取り残して大丈夫なのだろうか」と感じられるのが自然だと思います。根拠となっているのは、周囲を緊密に封鎖することで細菌への糖の供給が断たれ、病変の活動性が下がるという考え方です。歯髄を露出させて感染させてしまうより、生きた歯髄を守るほうが歯の寿命にとって有利だという判断に基づいています。

日本歯科保存学会と日本歯内療法学会は、歯髄保護の診療ガイドラインを共同で作成しています。この中でも、露髄の可能性がある深い病変に対する暫間的間接覆髄が検討課題として取り上げられています。

一度で行う方法と、期間をあけて段階的に行う方法

選択的う蝕除去には、一度の処置で最終的な修復まで進める方法と、いったん仮の封鎖を行い、数か月後に改めて内部を確認してから最終的な修復に移る方法があります。

後者では、封鎖された期間に病変の活動性が下がり、歯髄側に新しい象牙質が形成されることが期待されます。前半で説明した第三象牙質の働きを、治療の中で活用する考え方です。

どちらを選ぶかは、欠損の深さ、症状の有無、歯髄の反応などをもとに判断されます。いずれの方法も、生きた歯髄を保存することを目的としている点は共通しています。

C3|歯の神経に達した場合の根管治療

歯髄が感染して保存が難しいと判断された場合は、根管の内部を治療します。感染した歯髄を取り除き、根管の中を清掃して形を整え、薬剤を緊密に詰めて再感染を防ぐという流れです。

根管は細く、途中で枝分かれしていたり、湾曲していたりします。肉眼だけでは内部を確認しきれないため、拡大した視野の下で処置を行うことが有用とされています。

当院グループには日本歯内療法学会の専門医が在籍しており、マイクロスコープを用いた精密な根管治療に取り組んでいます。歯を残すという方針を実現するうえで、この分野の精度は大きな意味を持ちます。

治療は複数回にわたることが多く、途中で中断すると再び細菌が入り込むおそれがあります。開始した場合は、最後まで通っていただくことが結果につながります。

>>当院の精密根管治療についてはこちら

神経を抜いた後の痛みがどのくらい続くのかについては、以下の記事で解説しています。

>>歯の神経を抜いた後の痛みが続く期間についてはこちら

C4|歯根だけが残った場合の判断

歯冠が失われ、歯根だけが残った状態では、保存を試みるか抜歯を選ぶかで判断が分かれます。歯根にひびが入っていないか、周囲の骨がどの程度残っているか、歯ぐきより上に確保できる歯質があるかといった条件を確認します。

保存が可能と判断された場合は、根管の治療を行ったうえで土台を築き、被せ物で噛む機能を回復させます。

抜歯を選ぶ場合は、その後の欠損をどう補うかまで含めて検討します。周囲の歯の状態、噛み合わせ、清掃のしやすさなど、考慮する条件は患者さまごとに異なります。どちらの選択にも利点と留意点があり、状態を確認したうえで相談しながら決めていく場面です。

穴が空いた虫歯を治療した後、再発を防ぐために

穴が空いた虫歯を治療した後、再発を防ぐために

治療によって形が回復しても、虫歯ができた原因が変わらなければ、同じことが繰り返されます。修復物の周囲は、新たな虫歯が生じやすい部位でもあります。

ここでは、フッ化物を日常に組み込むこと、糖を口にする回数と時間を整えること、そして症状がなくても定期的に確認することという三つの柱について解説します。いずれも、無理なく続けられる形にすることが長続きの条件になります。

フッ化物を日常に組み込む

フッ化物を配合した歯磨剤を使い続けることは、う蝕の予防において最も広く根拠が蓄積されてきた方法のひとつです。歯質を酸に溶けにくい性質へ変え、再石灰化を助ける働きがあります。

使い方にも工夫の余地があります。歯磨きの後に何度もうがいをすると、口の中に残るフッ化物が減ってしまいます。少量の水で1回すすぐ程度にとどめると、口腔内に留まりやすくなります。

歯科医院で行う高濃度のフッ化物塗布を組み合わせる方法もあります。ご自宅での使用と歯科医院での処置を重ねることで、日常的に触れる機会を増やすという考え方です。

糖を口にする回数と口腔内のpH

虫歯の進行に影響するのは、糖の総量よりも口にする回数です。飲食のたびに口の中は酸性に傾き、唾液の働きで中性へ戻るまでには時間がかかります。

間食や甘い飲み物の回数が多いほど、歯が酸にさらされている時間の合計は長くなります。同じ量を口にする場合でも、まとめて摂るのと少しずつ何度も摂るのとでは、歯にとっての意味が変わってきます。

甘いものを完全にやめるという話ではありません。飲み物を水やお茶に置き換える時間帯を作る、間食の回数を1日1回にまとめるといった形で、酸性に傾いている時間を短くしていくという方向です。

症状がなくても定期的に確認する理由

この記事で繰り返しお伝えしてきたとおり、痛みは進行の指標になりません。だからこそ、症状の有無にかかわらず一定の間隔で確認する仕組みが必要になります。

定期検診では、修復物の境目、歯と歯の間、歯ぐきが下がって露出した歯根の部分など、ご自身では見えない部位を確認します。必要に応じてエックス線検査を行い、内部の状態も併せて把握します。

来院の間隔は、一律に決められるものではありません。う蝕のリスク、歯周組織の状態、修復物の数などによって適切な間隔は変わります。当院では、患者さまごとの口腔状態に応じた間隔をご提案しています。

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定期検診に意味があるのかという疑問については、以下の記事で詳しく解説しています。

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まとめ:虫歯で穴が空いているのに痛くないときこそ、一度確認を

まとめ:虫歯で穴が空いているのに痛くないときこそ、一度確認を

虫歯で穴が空いているのに痛くない理由は、ひとつではありません。歯の構造上まだ痛みが伝わらない段階にある場合があります。第三象牙質や硬化象牙質という防御反応によって、痛みが出にくくなっている場合もあります。そして、歯髄がすでに機能を失っている場合もあります。

共通しているのは、いずれも治癒を意味しないという点です。う窩ができた歯質が自然に元へ戻ることはなく、痛みという自覚症状と歯の内部の状態は一致しないことがあります。国内では約3割の方が未処置のう蝕を持ち、成人のおよそ半数に無症状の根尖性歯周炎があると報告されています。

一方で、早い段階で確認できれば、削らずに管理する、歯髄を残して修復する、といった選択肢が残されています。進行するほど、削る量も通院の回数も増えていきます。今の段階を知ることが、選べる道を広く保つことにつながります。

兵庫県川西市、川西能勢口駅から徒歩3分の川西歯医者 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科では、虫歯治療において、歯科用CTやマイクロスコープを用いた精密な診断のもとで削る範囲をできるかぎり抑え、歯を残すという方針で取り組んでいます。歯に穴が空いているのに痛みがないという状態でお困りの方は、まずはお気軽にご相談ください。

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