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親知らずを抜かない人の割合とは|研究データで見る3つの内訳と残せる親知らずの条件

こんにちは。兵庫県川西市、川西能勢口駅から徒歩3分の川西歯医者 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科です。

「親知らずは抜かない人もいると聞いたけれど、実際にはどれくらいいるのだろう」と気になっていませんか。

周りに抜歯をした人が多いと、自分も抜くべきなのかと不安になる方もいらっしゃいます。一方で、痛みがないのであれば、できれば抜かずに過ごしたいと考えるのも自然なことです。

実は、親知らずを抜かない人の割合は、一つの数字でははっきりと表せません。親知らずがもともとない人や、骨の中に埋まったまま過ごしている人など、さまざまな方が含まれるためです。

この記事では、国内外の研究データをもとに、抜かない人の内訳を順番に見ていきます。あわせて、抜かずに残せる親知らずと、抜歯を検討したい親知らずの違いについても解説します。

ご自身の親知らずとどのように付き合っていくかを考える際の参考にしてください。

親知らずを抜かない人の割合が一つの数字で語れない理由

インターネットで調べると、「抜かない人は約3割」など、さまざまな数字が見つかります。ところが、その数字が何を数えたものなのかは、記事によって大きく異なります。

「親知らずがない人」を数えているのか、「残している人」を数えているのかで、割合は変わるからです。

また、抜かずに残している理由も、人によってまったく違います。問題がないから残している方もいれば、抜く機会がないまま過ごしている方もいます。

ここでは、まず「抜かない人」にどのようなタイプが含まれるのかを確認します。そのうえで、抜かない人の割合を示す公的な統計が見当たらない背景について、次で詳しく解説します。

親知らずを「抜かない人」に含まれる3つのタイプ

ひとくちに「親知らずを抜かない人」といっても、大きく分けると3つのタイプがあります。

1つ目は、そもそも親知らずがない人です。親知らずのもとになる歯の芽が作られず、生まれつき存在しないケースがこれにあたります。

2つ目は、親知らずはあるものの、抜かなくても問題が起きていない人です。まっすぐ生えて上下で噛み合っている場合や、骨の中に完全に埋まって変化がない場合などが含まれます。

3つ目は、本来は抜歯を検討したほうがよい状態でも、抜かずに残している人です。「痛みが落ち着いたから」「忙しくて時間がとれないから」と、受診を先送りにしているケースです。

「自分はどのタイプに当てはまるのだろう」と思われた方もいるかもしれません。

実は、この3つのタイプは見た目だけでは区別がつきにくく、レントゲンで初めて分かることが多くあります。同じ「抜かない人」でも、タイプによって必要な対応はまったく異なるのです。

親知らずを「抜かない人の割合」を示す公的な統計が見当たらない背景

親知らずについて、「何割の人が抜かずに残しているか」をまとめた公的な統計は見当たりません。親知らずを抜いた経験は自己申告では正確に把握しにくく、レントゲンでの確認も必要になるためです。

そのため、ネット上の「○割」という数字は、調査の対象や方法が示されていないことも少なくありません。

そこでこの記事では、数字を一つに絞るのではなく、研究データを組み合わせて考えていきます。具体的には、「生まれつき親知らずがない人」「埋まったままの人」「残した親知らずのその後」の3つです。

これらを順に見ていくと、抜かない人の割合がどのような人で成り立っているのかが見えてきます。

なお、親知らずを抜いた後に「抜かなきゃよかった」と感じる方の声もよく見られます。親知らずの抜歯後の後悔についてより詳しくは以下をご覧ください。

>>親知らずを抜かなきゃよかったと後悔する理由|痛み・しびれの経過と抜く前の判断基準

親知らずを抜かない人の割合を研究データから読み解く

ここからは、親知らずを抜かない人の割合を、研究データをもとに具体的に見ていきます。取り上げるのは、生まれつき親知らずがない人、骨の中に埋まったままの人、生えていても残している人の3つです。

いずれも、パノラマレントゲンなどの画像検査を使った調査が中心となっています。

ただし、数字は調査を行った国や地域、対象者の年齢によって幅があります。「この数字が自分にそのまま当てはまる」というよりも、傾向をつかむための目安として読んでいただくのがおすすめです。

まずは、親知らずが生まれつきない人の割合について、次で詳しく解説します。

親知らずが生まれつきない人の割合

親知らずが生まれつきないことを、歯科では「先天性欠如(せんてんせいけつじょ)」と呼びます。

先天性欠如とは、あごの骨の中で歯のもとになる「歯胚(しはい)」が作られない状態のことです。親知らずの歯胚は、一般的に10歳前後からあごの骨の中で作られ始めるといわれています。

そのため、子どものうちは親知らずがあるかどうかが分かりにくい場合があります。親知らずは、ほかの歯と比べて生まれつき欠けている頻度が高い歯として知られています。

その背景には、食生活の変化に伴うあごの大きさの変化や、遺伝の影響などが関係していると考えられています。

ただし、なぜ親知らずが作られないのかについては、まだ完全には解明されていません。親知らずがない人は「抜かない人」に含まれるため、この割合は抜かない人の割合を考えるうえでの土台となります。

世界平均とアジア人の傾向

世界各地の研究をまとめたメタ分析では、親知らずが少なくとも1本ない人の割合は約22.6%と報告されています。

メタ分析とは、複数の研究結果を統計的にまとめて、全体の傾向を調べる研究方法です。同じ分析では地域ごとの違いも示されており、アジアの人々では約29.7%と高い傾向が見られました。

つまり、アジアでは3〜4人に1人程度が、少なくとも1本の親知らずを生まれつき持っていないことになります。「周りに親知らずがない人が多い」と感じるのは、こうした傾向が関係しているのかもしれません。

ただし、これは「4本すべてがない人」の割合ではない点に注意が必要です。

日本人を対象にした調査の数値

日本人を対象にした研究では、矯正歯科を受診した患者さまのデータが多く報告されています。それらの報告では、親知らずの先天性欠如が見られる割合は約22.2%から32.3%とされています。

世界平均と比べると、日本人はやや高めの傾向にあるといえます。一方で、4本の親知らずがすべて生まれつきない人は、約4%にとどまるという報告もあります。

多くの方は、「上だけない」「片側だけない」など、一部の親知らずだけが欠けているのです。「自分には親知らずがない」と思っていても、実は骨の中に埋まっているだけというケースもあります。

親知らずがあるかどうかは、レントゲンで確認することで初めて正確に分かります。

親知らずが埋まったままになっている人の割合

親知らずを抜かない人の中には、親知らずが骨や歯茎の中に埋まったまま過ごしている方も多くいます。

このように、歯が正常な位置まで生えてこられない状態を「埋伏(まいふく)」と呼びます。

17歳以上を対象にした世界的なメタ分析では、親知らずの埋伏が見られる人の割合は約24.4%と報告されています。およそ4人に1人が、少なくとも1本の親知らずが埋まった状態にあるという計算です。

埋まっている親知らずは口の中から見えないため、痛みや腫れが出ない限り気づかないことがほとんどです。「親知らずは生えてこなかったから、もともとないのだろう」と考えている方も少なくありません。

実際には、レントゲンを撮ってみて初めて、骨の中に親知らずがあると分かるケースも多くあります。埋まっている親知らずがすべて問題になるわけではありませんが、向きや深さによって注意点が変わります。

下の親知らずが埋まりやすい理由

同じメタ分析では、下あごの親知らずは、上あごに比べて埋伏しやすいことも示されています。

下あごで埋伏が起こるオッズは、上あごより約58%高いと報告されています。オッズとは、ある出来事が起こる見込みの大きさを比べるための統計上の指標です。

下あごの親知らずが埋まりやすい理由としては、歯が並ぶためのスペースの不足が考えられています。下あごでは、手前の歯の奥に十分な骨のスペースがないと、親知らずが途中で止まりやすくなります。

また、下あごの骨は硬く厚みがあるため、歯が骨を押しのけて出てくるのが難しい場合もあります。「下の親知らずだけが生えてこない」と感じている方は、こうした仕組みが関係している可能性があります。

埋まっている親知らずの向きと割合

埋まっている親知らずの向きについても、研究データがあります。

多く見られたのは、手前の歯に向かって斜めに傾いている「近心傾斜(きんしんけいしゃ)」で、約41%でした。次いで、まっすぐ縦向きの「垂直」が約26%、奥に向かって傾く「遠心傾斜」が約12%でした。真横に倒れた「水平」も約11%見られました。

近心傾斜とは、親知らずの頭の部分が手前の歯にもたれかかるように傾いている状態です。この向きでは、親知らずと手前の歯の間にすき間ができ、食べかすや汚れがたまりやすくなります。

同じ「埋まっている親知らず」でも、向きによって手前の歯への影響は大きく変わるのです。この点については、後の章で研究データとあわせて詳しく解説します。

生えていても抜かずに残している人の実態

親知らずがきちんと生えている人の中にも、抜かずに残している方がいます。まっすぐ生えて上下の歯と噛み合い、歯ブラシが届いて清潔に保てている場合は、抜歯をしない選択肢があります。

このような親知らずは、ほかの奥歯と同じように食べ物を噛む役割を果たしています。ただし、「きちんと生えている」かどうかの判断は、見た目だけでは難しい場合があります。

歯の一部が歯茎に覆われていたり、根の形が複雑だったりすることもあるためです。また、年齢とともに親知らずを残している人の割合は変わっていきます。

若いころに問題がなかった親知らずが、何年も経ってから虫歯や歯茎の腫れを起こすこともあるためです。生えている親知らずを残している人の割合は、時間とともに少しずつ減っていくと考えられます。

上の親知らずが残されやすい理由

上あごの親知らずは、下あごに比べて比較的まっすぐ生えやすい傾向があります。上あごの骨は下あごよりやわらかく、歯が出てくる方向の自由度が高いためと考えられています。

そのため、上の親知らずは抜かずに残されているケースが比較的多く見られます。国内でも、上あごの親知らずの形や位置、年齢ごとの保存状況を調べた報告があります。

その中では、上の親知らずには抜歯以外に活用できる場面がある点にも触れられています。

一方で、噛み合う下の親知らずがない場合、上の親知らずが下に向かって伸びてくることがあります。「上だけ残しても大丈夫かな」と思われた方は、噛み合わせの状態もあわせて確認してみることが大切です。

親知らずを抜かない人の割合が多くても「抜かなくて安心」とは限らない理由

ここまで見てきたように、親知らずを抜かない人の割合は決して少なくありません。「みんな抜いていないなら、自分も抜かなくて大丈夫だろう」と感じた方もいるかもしれません。

しかし、抜かない人が多いことと、その親知らずに問題がないことは、別の話です。親知らずは、痛みがないまま手前の歯に影響を与えている場合があります。

また、今は問題がなくても、年月とともに状況が変わることも分かっています。

ここでは、痛みの有無と問題の有無の違い、残した親知らずが将来抜歯になる割合、国際的な見解を順番に紹介します。まずは、「痛くない」と「問題がない」の違いについて、次で詳しく解説します。

「痛くない」と「問題がない」は別のこと

親知らずについて相談に来られる患者さまの中には、「痛くないから大丈夫だと思っていた」という方が多くいらっしゃいます。痛みは、体が異常を知らせるサインの一つです。

ただ、歯や歯茎の病気は、痛みが出る前の段階で静かに進んでいることも少なくありません。海外の口腔外科の専門学会も、症状がないことと病気がないことは区別して考えるべきだとしています。

例えば、親知らずの周りの歯茎の溝が深くなっていても、本人が気づくことはほとんどありません。手前の歯の後ろ側にできた虫歯も、外からは見えにくく、痛みが出るまで分からない場合があります。

「痛くない」というのは、あくまで今の時点で症状が出ていないという意味です。親知らずに問題が隠れていないかは、レントゲンなどの画像検査で確認することで分かります。

レントゲンで初めてわかる手前の歯の虫歯

親知らずが斜めに傾いていると、手前の歯との間にすき間ができ、汚れがたまりやすくなります。この場所は歯ブラシが届きにくく、手前の歯の後ろ側に虫歯ができることがあります。

複数の研究をまとめたメタ分析では、下の親知らずの向きと、手前の歯の虫歯との関係が調べられています。その結果、近心傾斜の親知らずでは、垂直に生えている場合に比べて虫歯のオッズ比が約7.3倍でした。

真横に倒れている水平の親知らずでも、約8.1倍と高い値が示されています。この虫歯は歯と歯の間の奥にできるため、鏡で見ても気づきにくいのが特徴です。

進んでから見つかると、親知らずだけでなく、手前の大切な奥歯の治療が必要になることもあります。

痛みのない虫歯についてより詳しくは以下をご覧ください。

>>虫歯で穴が空いているのに痛くないのはなぜか|痛みが出ない仕組みと放置リスク、進行度別の治療法を解説

>>当院の虫歯治療についてはこちら

気づきにくい歯茎の炎症(智歯周囲炎)

親知らずの周りの歯茎に起こる炎症を、「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」と呼びます。智歯とは親知らずのことで、歯の一部だけが歯茎から出ている場合に起こりやすい炎症です。

例えば、仕事が忙しく疲れがたまった時期に、奥の歯茎が腫れて口を開けにくくなったとします。数日で腫れが引くと、「治ったから大丈夫」とそのままにしてしまう方も少なくありません。

しかし、親知らずと歯茎のすき間に汚れがたまる状態は変わっていないため、炎症は繰り返されやすくなります。炎症を繰り返すうちに、親知らずの周りの骨や、手前の歯の歯茎に影響が及ぶこともあります。

「たまに腫れるけれど、数日で治まるから」と感じている方は、一度歯科医院で状態を確認してみることが大切です。

残した親知らずが将来抜歯になる割合

「今は問題がなくても、将来はどうなるのだろう」と気になる方も多いのではないでしょうか。

この疑問に関連する研究として、症状のない親知らずを残した若い成人を追跡した調査があります。7つの研究をまとめたシステマティックレビューでは、残した親知らずが抜歯に至る割合は、平均で年に約3%と報告されています。

システマティックレビューとは、決められた方法で関連研究を集め、結果を総合的に評価する研究方法です。年に約3%というと、少なく感じるかもしれません。

しかし、追跡期間が長くなるほど抜歯に至る割合は高くなり、1年で約5%、18年では約64%に達していました。抜歯に至った理由は、虫歯や歯周病、炎症などでした。

つまり、「今は抜かない人」の中にも、年月とともに抜歯が必要になる方が一定の割合で含まれているのです。

ただし、このレビューは対象となった研究の数が限られており、結果は慎重に受け止める必要があるとされています。抜かない人の割合は時間とともに変わっていく数字だと考えると、ご自身の状況もイメージしやすくなります。

年齢とともに抜歯の負担が変わる理由

親知らずの抜歯は、一般的に若いうちのほうが体への負担が少ないといわれています。若い時期は親知らずの根がまだ完成しておらず、周りの骨も比較的やわらかい傾向があるためです。

年齢を重ねると骨が硬くなり、歯と骨がしっかりくっついてくることがあります。

また、抜歯後の傷の治りにも時間がかかりやすくなる傾向があります。高血圧や糖尿病などの持病や、服用しているお薬との関係を考える必要も出てきます。

ただし、年齢を重ねたからといって抜歯ができなくなるわけではありません。「もう40代だから、今さら抜けないのでは」と心配される方もいますが、状態を確認したうえで判断できます。

40代での親知らずの抜歯についてより詳しくは以下をご覧ください。

>>40代で親知らず抜歯は危険なのか|年齢特有のリスクと安全に抜くための判断基準

予防的な抜歯をめぐる国際的な見解

症状のない親知らずを、将来のトラブルに備えて抜くことを「予防的抜歯」と呼びます。この予防的抜歯については、世界的にも意見が分かれています。

医療の根拠を評価する国際的な組織であるコクランは、2020年にこのテーマのレビューを公表しました。その中では、症状も病変もない埋まった親知らずを抜くべきか残すべきかについて、判断できるだけの根拠は不十分だとされています。

また、英国の国立医療技術評価機構(NICE)は、2000年のガイダンスで病変のない親知らずの予防的抜歯に慎重な見解を示しています。

一方で、先ほど紹介したように、残した親知らずが年月とともに抜歯に至る割合も報告されています。

つまり、「すべての親知らずを抜くべき」とも「抜かなくてよい」とも言い切れないのが現状です。だからこそ、親知らずの扱いは一律に決めるのではなく、一人ひとりの状態を見て判断することが大切です。

親知らずの向きや深さ、手前の歯の状態、年齢や生活の状況をもとに、歯科医師と相談しながら決めていきましょう。

親知らずを抜かない人の割合に入る歯と、抜歯を検討したい歯の違い

ここまでのデータから、親知らずを抜くかどうかは一人ひとりの状態によって異なることが分かりました。「自分の親知らずは抜かずに残せるのか、それとも抜歯を考えたほうがよいのか」と気になる方も多いでしょう。

この章では、抜かずに様子を見ることが多い親知らずと、抜歯を検討したい親知らずの違いを紹介します。あわせて、抜かずに残した親知らずが、将来ほかの治療に活用される可能性についても触れます。

ここで紹介する内容は一般的な目安であり、実際の判断にはレントゲンやCTでの確認が欠かせません。それぞれのケースについて、次で詳しく解説します。

抜かずに様子を見ることが多い親知らず

親知らずの中には、抜歯をせずに経過を見ていくことが多いケースがあります。このような対応を、歯科では「経過観察」と呼びます。

経過観察とは、その場で治療をせず、定期的に状態を確認しながら変化がないかを見ていく方法です。

ここで大切なのは、経過観察は「何もしないで放っておくこと」とは違うという点です。抜かずに残すと決めた場合でも、定期的に歯科医院でレントゲンや歯茎の状態を確認する必要があります。

「抜かなくていいと言われたから、もう行かなくていい」と考えてしまうと、変化に気づくのが遅れることがあります。

ここからは、経過観察となることが多い代表的な3つのケースを紹介します。

まっすぐ生えて上下で噛み合っている

親知らずがまっすぐ生えていて、上下の親知らずがしっかり噛み合っている場合です。この状態の親知らずは、ほかの奥歯と同じように食べ物をすりつぶす役割を果たしています。

さらに、歯ブラシが奥まで届き、毎日の歯磨きで清潔に保てていることも大切な条件です。親知らずやその周りに虫歯や歯茎の腫れがなければ、抜歯をしない選択肢が考えられます。

ただし、親知らずは口の奥にあるため、「磨けているつもり」でも汚れが残りやすい場所です。歯科医院でのチェックで、磨き残しがないかも確認しておくと安心です。

骨の中に完全に埋まり変化がない

親知らずが骨の中に完全に埋まっていて、レントゲンで見ても周りに変化がない場合です。このような親知らずは口の中に出ていないため、細菌に触れにくく、炎症が起こりにくいと考えられています。

深く埋まった親知らずを抜くには骨を削る処置が必要になり、体への負担が大きくなることもあります。そのため、問題が起きていない場合は、抜歯をせずに経過を見る選択をすることがあります。

ただし、まれに埋まった親知らずの周りに「嚢胞(のうほう)」と呼ばれる袋状の病変ができることがあります。定期的に画像検査を受けて、親知らずの周りに変化がないかを確認していくことが大切です。

神経に近く抜歯のリスクが高い

下の親知らずの根の近くには、「下歯槽神経(かしそうしんけい)」という神経が通っています。下歯槽神経は、下唇やあごの皮膚の感覚を伝える神経です。

親知らずの根がこの神経に近い場合、抜歯によって唇やあごにしびれが残るリスクがあります。そのため、問題が起きていない親知らずであれば、無理に抜かずに経過を見る判断をすることがあります。

抜歯が必要な場合でも、歯の頭の部分だけを取り除く「歯冠除去術(コロネクトミー)」が検討されることもあります。

歯冠除去術とは、神経に近い根をあえて残すことで、神経を傷つけるリスクを抑えることを目指す処置です。神経との位置関係は平面のレントゲンだけでは判断が難しい場合があり、CTで立体的に確認することが勧められます。

抜歯を検討したい親知らず

一方で、抜歯を検討したほうがよい親知らずもあります。親知らずそのものや手前の歯、周りの歯茎に影響が出ている場合、またはその可能性が高い場合です。

「痛くないのに抜くのはもったいない」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、親知らずが原因で手前の歯が虫歯や歯周病になると、本来は守れたはずの歯まで治療が必要になることがあります。親知らずを抜くことは、手前の奥歯を長く残すための選択肢の一つと考えることができます。

もちろん抜歯には腫れや痛みなどのリスクもあるため、メリットとリスクの両方を知ったうえで決めることが大切です。

ここからは、抜歯を検討したい代表的な3つのケースを紹介します。

斜めや横向きで一部だけ見えている

親知らずが斜めや横向きに生えていて、歯の一部だけが歯茎から見えている状態です。この形では、親知らずと歯茎の間や、親知らずと手前の歯の間に汚れがたまりやすくなります。

前の章で紹介したように、手前の歯の後ろ側に虫歯ができやすいことも報告されています。歯ブラシを当てようとしても、親知らずの角度によって毛先が届かない部分が残ってしまいます。

「毎日磨いているのに、奥のほうがいつもにおう」と感じる場合は、汚れがたまっているサインかもしれません。このようなケースでは早めに状態を確認し、抜歯を含めた対応を相談することが勧められます。

腫れや痛みを繰り返している

親知らずの周りの歯茎が、腫れたり痛んだりを繰り返している場合です。一度炎症が起きると汚れがたまりやすい状態が続くため、疲れや体調の変化をきっかけに再び腫れやすくなります。炎症が強くなると、口が開けにくくなったり、のどの近くまで腫れが広がったりすることもあります。

また、炎症が強い時期は麻酔が効きにくく、その日のうちに抜歯ができないこともあります。そのため、腫れが落ち着いているタイミングで、抜歯について相談しておくことが大切です。

生えかけの親知らずの痛みについてより詳しくは以下をご覧ください。

>>生えかけの親知らずが痛い原因といつまで続くか|自宅での対処法も解説

歯並びや矯正治療への影響が考えられる

矯正治療を計画する際に、親知らずの抜歯が検討されることがあります。奥歯を後ろへ動かすスペースを作る場合や、治療後の歯並びへの影響が心配される場合などです。

一方で、「親知らずが前の歯を押して歯並びが乱れる」という説については、研究者の間でも意見が分かれています。コクランのレビューで取り上げられた臨床試験でも、抜歯の有無で5年後の下の前歯の乱れに差は認められませんでした。

そのため、歯並びを理由に抜歯を考える場合は、矯正治療の計画や現在の歯並びをふまえて判断します。矯正治療を検討している方は、親知らずの扱いについても事前に相談しておくと安心です。

抜かずに残す親知らずの活用(移植・ブリッジ)

抜かずに残している親知らずには、将来ほかの治療に役立つ可能性もあります。

その一つが「歯の移植」です。歯の移植とは、虫歯などで失った歯の場所に、ご自身の親知らずを移し替える治療です。ご自身の歯を使うため、条件が合えば周りの組織となじみやすいと考えられています。

もう一つは、失った歯を補う「ブリッジ」の土台として、親知らずを使う方法です。ブリッジとは、失った歯の両隣の歯を支えにして、橋をかけるように人工の歯を入れる治療です。

ただし、移植やブリッジに使えるかどうかは、親知らずの形や根の状態、噛み合わせなどによって変わります。まっすぐ生えていて健康な状態の親知らずであることが、活用を考えるうえでの条件になります。

「いつか使えるかもしれないから残しておきたい」と考える方は、親知らずの状態を良好に保つことが大切です。

親知らずを抜かない人の割合に入った後も欠かせない定期的なチェック

親知らずを抜かずに残すと決めた場合、その後はどのように過ごせばよいのでしょうか。抜かない人の割合に入ったからといって、親知らずのことを考えなくてよくなるわけではありません。

前の章で紹介したように、残した親知らずは年月とともに虫歯や炎症を起こすことがあります。大切なのは、歯科医院での画像検査、毎日のセルフケア、定期検診の3つを続けることです。

変化に早く気づくことができれば、親知らずへの対応も、手前の歯への影響も小さく抑えられる可能性があります。それぞれの内容について、次で詳しく解説します。

歯科医院で行う画像検査(パノラマ・CT)

親知らずの状態を確認するために、歯科医院ではパノラマレントゲンやCTを使います。パノラマレントゲンとは、上下のあご全体を一枚の写真に写すレントゲンです。

親知らずの有無や向き、埋まっている深さ、手前の歯との位置関係を大まかに確認できます。

一方、歯科用CTは、あごの骨や歯を立体的に写すことができる検査機器です。パノラマレントゲンでは重なって見える神経との距離や根の形を、さまざまな角度から確認できます。

川西歯医者 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科では歯科用CTを備え、親知らずの状態を立体的に確認できる体制を整えています。

「抜くかどうかを決める前に、まず今の状態を知りたい」という方にも、画像を見ながら分かりやすくご説明しています。画像で状態を確認しておくと、抜かずに残す場合も抜歯を選ぶ場合も、納得して判断しやすくなります。

親知らず周りのセルフケア

残している親知らずを清潔に保つためには、毎日の歯磨きの工夫が欠かせません。

親知らずは口の奥にあり、通常の歯ブラシでは毛先が届きにくい場所です。そこで役立つのが、「タフトブラシ」と呼ばれる、毛先が小さくまとまった歯ブラシです。

タフトブラシを使う際は、口を少し閉じ気味にして頬の力を抜くと、奥まで入れやすくなります。そのうえで、親知らずと手前の歯の境目や、親知らずと歯茎の境目に毛先を当て、小さく動かして磨きます。

通常の歯ブラシで全体を磨いた後に、タフトブラシで親知らずの周りを仕上げる流れにすると、毎日続けやすくなります。鏡を使って、毛先がどこに当たっているかを見ながら磨くのもおすすめです。

「奥まできちんと届いているか分からない」と感じる方は、歯科医院で磨き方を一緒に確認してもらうと安心です。

定期検診で確認していること

親知らずを残している方にとって、定期検診は変化を早く見つけるための大切な機会です。定期検診では、親知らずの周りの歯茎の溝(歯周ポケット)の深さを測り、炎症が起きていないかを確認します。

あわせて、手前の歯の後ろ側に虫歯ができていないか、磨き残しがたまっていないかもチェックします。必要に応じてレントゲンを撮り、埋まっている親知らずの周りに変化がないかを確認することもあります。

自分では見えにくい場所だからこそ、歯科医院での定期的な確認が役立ちます。

川西歯医者 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科では予防を中心とした方針のもと、お一人おひとりに合わせた予防プランをご提案しています。定期検診の必要性についてより詳しくは以下をご覧ください。

>>歯医者の定期検診は意味ない?感じる理由と本当の必要性、後悔しない医院の選び方

>>当院の予防歯科についてはこちら

親知らずを抜かない人の割合に関するよくある疑問

ここでは、親知らずを抜かない人の割合を調べている方が抱きやすい疑問を取り上げます。「抜いた人の中には後悔している人もいるのでは」「片方だけ抜くことはできるのか」といった声は、よく耳にするものです。

また、30代や40代まで抜かずにきた方や、そもそも親知らずがあるか分からない方からのご相談も多くあります。それぞれの疑問について、一般的な考え方を紹介します。

ご自身の状況に近いものから読み進めてみてください。

抜かなきゃよかったと感じる人がいる理由

親知らずを抜いた方の中には、「抜かなきゃよかった」と感じる方もいます。その理由として多く挙げられるのが、抜歯後の腫れや痛みが想像していたより大きかったというものです。

特に骨の中に埋まった親知らずを抜いた場合は、数日間腫れが続くこともあります。

また、一時的に口が開けにくくなったり、食事がとりにくくなったりすることもあります。こうした後悔の多くは、抜歯後にどのような経過をたどるのかを事前に知らなかったことから生まれています。

抜歯を選ぶ場合は、腫れが強くなりやすい時期や、仕事や予定への影響について、あらかじめ説明を受けておくことが大切です。「抜いたほうがよい理由」と「抜いた後に起こりうること」の両方を知ったうえで決めると、納得して治療を受けやすくなります。

片側だけ抜いて、もう片側を残すこともできる

親知らずは、上下左右で生え方や状態が異なることがよくあります。

そのため、「右下だけ抜いて、ほかは残す」というように、必要な歯だけを抜歯することも可能です。4本の親知らずを一度にすべて抜かなければならない、ということはありません。

ただし、上下のどちらかを抜いた場合、噛み合う相手を失った親知らずの扱いを考える必要があります。噛み合う相手がない親知らずは少しずつ伸びてきて、反対側の歯茎を傷つけたり、汚れがたまりやすくなったりします。

「片方を抜いたら、もう片方はどうなるのか」という点も含めて、全体のバランスを見ながら判断します。

30代・40代まで抜かずにきた場合の考え方

30代や40代まで親知らずを抜かずに過ごしてきた方も、たくさんいらっしゃいます。これまで問題がなかったのであれば、今から慌てて抜かなければならないわけではありません。

大切なのは、今の親知らずの状態を一度確認しておくことです。長く残している親知らずでも、手前の歯の後ろ側に虫歯ができていたり、歯茎の溝が深くなっていたりすることがあります。画像で確認して問題がなければ、経過観察を続けることができます。

一方、何らかの変化が見つかった場合は、抜歯のメリットとリスクを比べながら対応を考えていきます。「ずっとそのままにしていたから、相談しにくい」と感じる必要はありませんので、気兼ねなくお話しください。

親知らずがあるかどうか自分で確かめる方法

親知らずがあるかどうかは、鏡で奥歯を数えてみると、ある程度の目安になります。前歯の真ん中から奥に向かって数えて、8番目の歯が親知らずにあたります。

鏡で見て8番目の歯が見えれば、親知らずが生えていると考えられます。

ただし、骨や歯茎の中に埋まっている親知らずは、鏡では確認できません。「7番目までしかないから、親知らずはない」と思っていても、実際には骨の中に埋まっている場合があります。

また、親知らずの一部が歯茎に覆われていて、ほかの歯と見分けにくいこともあります。親知らずの有無や状態を正確に知るためには、歯科医院でのレントゲン検査が必要です。

親知らずを抜かない人の割合だけで決めず、歯科医院で相談するメリット

親知らずを抜かない人の割合は、あくまで多くの人の傾向を示した数字です。

ご自身の親知らずを抜くかどうかを決める材料は、データではなく、ご自身の口の中にあります。歯科医院で相談すると、親知らずの向きや深さ、神経との距離、手前の歯の状態などを確認したうえで判断できます。

ここでは、相談することで得られる具体的なメリットを3つ紹介します。CTによる精密な位置確認、口腔外科の専門性と衛生管理、納得して選べるカウンセリングについて、次で詳しく解説します。

CTによる精密な位置確認

親知らずの抜歯を考えるとき、特に注意が必要なのが、神経や上顎洞との位置関係です。

上顎洞(じょうがくどう)とは、上あごの奥歯の上にある、鼻とつながった空洞のことです。下の親知らずでは下歯槽神経との距離、上の親知らずでは上顎洞との距離を確認することが大切になります。

歯科用CTを使えば、こうした構造と親知らずの位置関係を立体的に確認できます。平面のレントゲンだけでは分かりにくい根の曲がり方や、骨の厚みも把握しやすくなります。

川西歯医者 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科では、CTの画像をお見せしながら親知らずの状態をご説明しています。「自分の親知らずがどうなっているのか」を目で見て確認できると、抜く・抜かないの判断にも納得しやすくなります。

口腔外科の専門性と衛生管理

親知らずの抜歯は、歯科の中でも口腔外科と呼ばれる分野の処置です。

口腔外科とは、親知らずの抜歯や、口の中やあごの病気に対する外科的な処置を担う分野です。当グループには日本口腔外科学会認定医をはじめ、各分野の専門医・認定医が在籍しています。

難しい位置にある親知らずについても、専門的な知見をふまえて抜歯の方法やタイミングを検討します。また、抜歯のような外科処置では、器具の衛生管理も大切です。

CLASS B滅菌器による滅菌や、滅菌が難しい器具への使い捨て器具の採用など、衛生管理にも力を入れています。

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抜く・抜かないを納得して選べるカウンセリング

親知らずの抜歯は、一度抜くと元に戻すことができない治療です。そのため、抜く場合と抜かない場合のそれぞれのメリットとリスクを知ったうえで選ぶことが大切です。

カウンセリングでは、画像をもとに親知らずの状態をお伝えし、抜歯と経過観察の違いをご説明します。

抜歯を選ぶ場合は、処置の流れや術後の腫れの目安、通院の回数などもあらかじめお伝えします。

「まだ抜くかどうか決めていない」という段階でのご相談も、もちろん受け付けています。女性歯科医師の在籍やキッズルーム・託児への対応など、ご家族連れでも相談しやすい環境を整えています。

また、完全予約制のため、待ち時間を抑えて落ち着いてご相談いただけます。

まとめ:親知らずを抜かない人の割合より大切な「ご自身の親知らずの状態」

親知らずを抜かない人の割合は、一つの数字では表せません。抜かない人の中には、生まれつき親知らずがない人、埋まったまま問題が起きていない人、抜歯を検討したい状態のまま残している人が含まれます。

研究データでは、親知らずの先天性欠如はアジアで約3割、埋伏は世界で約4人に1人と報告されています。

一方で、症状のない親知らずを残した場合でも、年月とともに抜歯に至る方が一定の割合でいることも分かっています。大切なのは、割合の数字よりも、ご自身の親知らずが今どのような状態にあるかを知ることです。

画像検査で状態を確認し、残す場合も定期的なチェックを続けることで、手前の大切な歯を守ることにつながります。

兵庫県川西市、川西能勢口駅から徒歩3分の川西歯医者 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科では、親知らずの治療において、歯科用CTによる精密な診断と丁寧なカウンセリングで、患者さまが納得して抜く・抜かないを選べることを大切にする方針で取り組んでいます。

親知らずを抜くべきか迷っている方や、親知らずの周りの腫れ・違和感でお困りの方は、まずはお気軽にご相談ください。

参考文献

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